仏教の人権問題
仏教に関する人権問題について検討しています。
1.問題の提起
これまで日本の仏教史において、業報思想によるハンセン病の問題や、差別戒名等の問題を抱えてきた。これらの問題はフォーラムなどが行われ、近年では各教団が、人権理解について是正していく方向で一致しているところである。
LINEオープンチャット「仏教ふぁんくらぶ」の日蓮正宗信者(高橋 克郎 ( かつお ) = 弥勒菩薩氏)の説明によれば、日蓮正宗の教学において、「塔婆回向は人間界以外の衆生を成仏させるもの(なお人間には効かないものであるという)」であるとともに、この社会(*1)においても、人間界以外の種姓が存在しているという。
また、「小池百合子は天界の存在(バケモノ)(*2)」であり、2021年頃(*3)、塔婆回向をしたことによって、小池氏が入院するなどの結果をもたらしたという。
そこで本頁では、この信者の証言が確かなものであるか確認するとともに、日蓮正宗における「地獄・餓鬼・畜生・人・天の衆生」といった種姓を明らかにし、現実的(*4)に社会で生きている人間の種姓観について、確認するものとする。
なお、当然ながら、信者の理解不足により発生した可能性も考えられるため、「このような解釈に基づく高橋氏の依頼を受けて小池百合子氏の塔婆造立とそれに伴う回向を行った」とされる寺院及び本山に逐一確認したうえで、掲載する予定である。
2.問題の争点
1.日蓮正宗において、現実社会で生きている人間を、仏教的思想である五道・六道へと当てはめ、「人界の衆生」、「天界の衆生(バケモノ)」(*3)といった割り当てを行っている。
2.上記思想に従えば、現実社会において、「地獄」や「餓鬼」の人間もいることになり、その種姓の判断は日蓮正宗の教学に基づくものである。
3.こういった種姓の区別・差別は、人間として当たり前に有する尊厳の否定など、現代の人権問題に抵触する可能性がある。
4.高橋氏は他の人々に対し、本人に無断で塔婆回向を行っている。なお、本人に告知し、相手が怒った場合は「その人は人間界以外の存在である」としている(*下記画像を参照のこと)。
5.すなわち、日蓮正宗の塔婆回向を拒否するものは、天(怪物)・地獄・餓鬼のいずれかである。
6.その他ツイッターでは、ツイキャス配信者に対して、「水子の塔婆を立てないと日本語能力が下がる」といった脅迫じみた発言も行っている。
なお本件人権問題は、高橋氏を含む当人の信仰の自由を否定するものではなく、社会通念上の人権について取り扱うものである。
3.信徒の意見(根拠)
4.宗教儀礼による加害行為事例(刑事事件)
呪いによる健康被害というのは科学的に認められるものではないが、呪いを行ったことにより刑事事件になった事例は存在する。
例えば、祈祷師が神の力で加害する旨の告知をするのは畏怖させるに足りる程度の害悪の告知と認めたほか(最決昭31・11・20集10-11-15442)、「死ね」と書いたわら人形をつるしたとして江戸川区の無職の男性(41)も逮捕されている(2017年9月28日毎日新聞)。
また、群馬県南西部のゲームセンター駐車場で、ゲームセンターを経営する女性の名前が赤い塗料で書かれたわら人形が見つかり、藤岡市の男性(52)を脅迫容疑で逮捕(2017年1月31日朝日新聞)といった事件や、他にも1998年には、愛媛県の町長選で当選した町長の後援会幹部に釘を刺したわら人形を送ったとして、元町長が脅迫容疑で書類送検され、罰金10万円の略式命令がくだった事件もある(同朝日新聞)。
今回の事例の場合、「塔婆供養により、(異界の衆生である)小池都知事が入院した」としており、TwitterやLINEオープンチャット等での告知により、脅迫罪に該当する可能性があるほか、「小池百合子氏が異界の衆生である」といった内容について、名誉棄損が成立する可能性もある。
5.当該問題に関する計画と到達目標
【準備期間】
2022年12月 オープンチャットで信者に対する聞き取り調査
2023年1月 正宗寺院・正宗関係者に対する聞き取り調査
2023年2月 諸問題の整理 -社会通念上の人権について
2023年3月 団体立ち上げ・(調査費用等)助成金の申請
【調査期間】
2023年4月~2024年3月 各宗教団体の人権観・教学の調査
【中目標】
2023年~2027年 教学と現代の法律における人権問題の整理・社会問題の提起
【大目標】
2027年~2032年 各教団における人権の取り組み支援